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ある雪の日

2010.12.01 12:38 | カテゴリなし | 投稿者:根本秀節

 「ここはどこですか」と女性が窓越しに秀節に尋ねた。
 「え?ああ、福島県のいわきです」
 「そうですか」というなり女性は車を離れていった。
 ほんの一瞬のことであった。目を覚ましていた運転席の女性と顔を見合わせた。後から考えればおかしな秀節の答えであった。おかしいぞ。こんな遅くに女性一人。それにあたりには車が止まっていない。秀節はいっぺんに眠気から覚め、急いで車外に出ると、あっと驚いた。あたり一面が真っ白なのである。秀節はキョロキョロしながら、その女性がどこに行ったのかと思いながら、少し歩いてみた。車は1台も止まっていないし、その女性の姿はどこにも見あたらない。狐につままれた心持で、やがて、秀節は車に戻った。
 「どうだったの」
 「誰もいないんだ。おかしいな」二人は、しばし言葉も出ない。
 秀節が時計に目をやると、すでに午前12時を回っていた。12月1日ということになる。二人はドアを開けて、あたりをもう一度見回した。うっすらと積もった雪。遠くに見えたイカ釣り漁船の明かりも降りしきる雪にかすんでほとんど見えなかった。
帰り道は下り坂である。ゆっくりと車を走らせていた運転席の女性に秀節は尋ねた。
 「見たよね」
 「ええ、見たわよ」
 「顔を覚えている?長い髪だったような気がするんだが」
 「わたしも、眠くて、ボーっとしていて、あまりよく覚えていないの」
 「実は、私もあまりよく覚えていないんだ。突然のことだったし、夢かと思っているくらいだから。でも二人で同じ夢を見ることはないよね」
 「そうね」
 「雪女かな」
 「まさか、でも本当に不思議よね」
 山のだらだら坂をゆっくりと車を走らせながら、二人の会話が続いたが、国道に入る頃には雪は雨に変わっていた。車のワイパーの音だけが大きかったのを秀節は覚えている。かすかな記憶を手繰り寄せる銀色の糸が秀節の手からふっと消えた。

 「20数年前の12月1日の話ということになりますか。本当に不思議な体験でしたわね。ある夜の雪の日の女というところでしょうか」
 秀節の傍らで、膝の上にのったパグ犬の頭を撫でながら、秀節の妻が言った。

コメント
こんにちは
定期試験も終わり一段落ですね

根本君の書いた「ある雪の日」とても面白いです
創作ですか?
小説みたいでもっと読みたくなるような、
とても良く書けています

試験も終わったことだし
また更新してみてください
がんばって!


       愛読者。。。おけいさん。。。
       
投稿者:おけいさん: at 2011/07/22 16:23

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