The Kinks: Waterloo Sunset
2007.06.15 03:25 | my favorite songs | 投稿者:大神田
もしもロンドンに行く機会があったら、ホテルに荷物をあずけてから、いや、出来たら空港から直行したいが、とにかく何をおいてもまず地下鉄で夕暮れのウォルター橋に行きたい。もちろん、iPodでキンクスのWaterloo Sunsetを聴くためだ。音楽をあまり感傷的に聴くことはないが、キンクスのこの曲だけは別である。テムズ川に沈む夕陽を見ながら思い切り感傷にひたりたい。そして、夜の街をながめながらウォルタール駅近辺のパブでビターを飲みたい。
5時限目の授業が終った夕刻、学生たちが去った後のがらんとした教室でひとり、窓から見える西日の当たった建物や空を眺めながら、Waterloo Sunsetをよく聴いたものだ。目をつぶると、まぶたの裏にウォルタールーの夕陽が浮かび、ふと気がつくと曲はもう終っているのだが、そのまましばらく椅子にすわって音楽の余韻にひたっていると、一日の疲れも何も忘れた。キンクスの名曲Waterloo Sunsetは、ぼくにとっては、そのような無数にあった一日の終りの時間を思い出させてくれる曲である。
汚れ老いたテムズ川よ、お前は滔々と流れつづけ
夜にのみこまれてゆく
忙しなく往き来する群衆、ぼくは眩暈に襲われる
タクシーのライトがまぶしい
でも、ぼくには友だちはいらないのさ
ウォルタールーの夕陽を見つめていると
ぼくは天国にいるのだから
毎日ぼくは窓から世間を見ている
でも、冷え冷えとした夕刻
ウォルタールーの夕陽はすてきなんだ
テリーはジュリーに会う、ウォルタールー駅で
毎週金曜日になれば
でも、ぼくは怠け者だし、出歩きたくなどない
夜は家にいるのさ
でも、ぼくには不安はない
ウォルタールーの夕陽を見つめていると
ぼくは天国にいるのだから
大勢の人びとが、羽虫のように、ウォルタールーの地下鉄駅の周りに集まってくる
でも、テリーとジュリーは川をわたり
誰にもじゃまされない場所に行く
二人には友だちは要らないのさ
ウォルタールー橋の夕陽をながめていれば
二人は天国にいるのだから
ウォルタールー橋の夕陽はすてきなんだ
思い通りに訳せないが、歌詞の内容は以上の通りで、当時の映画からインスパイアーされたという。ロンドンのパブではラジオからこの曲が流れると客がみな一斉に歌い出すと誰かが書いていたが、きっとそうなんだろうなあと思う。
キンクスがレイ・デイヴィスとデイヴ・デイヴィス兄弟を中心に結成されたのは1963年、デビューは翌年の64年だが、世はまさにビートルズやローリンスストーンズなどが活躍していたいわゆるスィンギング・ロンドンの時代である。キンクスといえば、ハードロックの古典ともいうべきYou Really Got Me(ごく最近も車のテレビコマーシャルで使われていた)であまりにも有名だが、グループの曲のほとんどを作詩作曲しているレイ・デイヴィスはいわば異能の天才で、グループはあるときから人気を犠牲にしてまで路線を変更し、英国の香りの強い皮肉でセンチメンタルな独特のアルバムを発表するようになった。Waterloo Sunsetはそのようなキンクスの、というよりもレイ・デイヴィスの叙情詩人としての面目躍如たる名曲で、メロディの美しさも際立っている。
Waterloo Sunsetが収録されているのはSomething Else(1967)というアルバムだが、名曲ゆえにキンクスのベスト盤には必ず選ばれている。曲はもちろん英国のチャートで一位を獲得している。
コメント
- 大神田先生のコメント,大変羨ましく読ませて頂きました。何を隠そう私の夢のひとつは,現在小学3年生の娘が,もう少し大きくなったらロック・ファンとなって,父の所有するCDコレクションをうらやみ,一緒にコンサートに行ったりする仲となることです。現在は,ブリトニー・スピアーズのコンサートのDVDを一緒に観る所まで計画は進行したのですが,その先が少し滞っている所です。
PretendersのStop Your Sobbingは大変良い出来なんで,ずーっとオリジナル曲だと思って聴いていたんですよ。本当に素晴らしいです。この曲をプレゼントしてくれた,レイ・デイビスにクリッシー・ハインドがくらっと行ってしまったのもうなずけます。
私はパティ・スミスも好きで,大ファンではありませんがCDも持っています。社会の空気を音楽で表現することに秀でたロッカーですよね。アメリカのTVショウのサタデーナイトライブの25周年DVDに,パティ・スミスがグロリアを演奏するシーンが収録されていて,そのキレッぷりが凄いです。同じDVDの中で,コントのネタにもされて涙が出るほど笑ってしまいました。
きっと世代の違いなのでしょうけれど,私の大ファンである女性ロッカーはクリッシー・ハインド,スティービィー・ニックス,アニー・レノックスです。MTV世代ですね。
最後に,前回のコメントの中に文字化け部分が含まれてしまったこと,お詫びします。 - 投稿者:内藤統也: at 2007/07/12 13:47
- クリッシー・ハインズがカバーしているのはキンクスのStop Your Sobbingですね。このカバーは最高です。キンクスの元歌よりもよいかも知れません。
プリテンダーズはぼくもファンです。女性ロッカーの最高峰はパティ・スミスだと信じていますが、クリッシーはパティに続く存在でしょうか。彼女はいかにもロックしています。もう1人ジョアン・ジェットというとてもすぐれた女性ロッカーがいて、彼女もキンクスの「銀幕の英雄」Celluloid Heroという名曲(ほんとうに泣かせる名曲です)をカバーしていますが、キンクスのレイ・デイヴィスはものすごい変わり者で人付き合いが悪そうであるにもかかわらず、これだけ女性アーティストがよいカバーを出すということは、女性をひきつけるものがあるのかも知れません。
ヴァン・ヘイレンのYou Really Got Meもいいですね。ヴァン・ヘイレンは、内藤先生にも申し訳ありませんが、ぼくにとってはわざわざCDを買おうと思わないグループですが(ぼくが買わずとも息子がみな持っているということもあります)、キンクスの名曲をカバーしそのハードな面を再認識させてくれたということで感謝しています。
ところでぼくの息子は、母親の妹(内藤先生と同じくらいの年齢だと思いますが筋金入りのメタルファンです)の影響で小学校の頃からのメタルファンで、自らもバンドでギターを弾いていますが、ヴァン・ヘイレンがカバーしたYou Really Got Meの本家本元キンクスのファンであるということで父親に一目置いているようです。何しろキンクスのCDだけでも30枚以上持っていますからね。50代の後半になったというのに未だにロックファンであるということでも、普通の父親と違うと認めてくれているようです。何しろ白髪頭のおじさんが息子に付き合って、マリリン・マンソンやモトリークルーのコンサートに行くのですから、何をかいわんやです。年寄りの冷や水もいいところでしょうか。
- 投稿者:大神田: at 2007/07/03 12:32
- 大神田先生
経営情報学部の内藤です,お誘いに乗って先生のブログの“my favorite things”に来ました。The Kinksの音楽に先生が心酔されている様子が伝わって来て,私も胸を熱くして読ませて頂きました。
私のThe Kinks体験は,アメリカのハード・ロック・バンド,Van Halenが,1stアルバムでカバーした“You Really Got Me”からです。それも,発売当初に聞いたのではなく,Van Halenのファンとなって,遡って聴いたのでした。画期的なギター演奏法で注目されていた,Van Halenの音楽は中学~高校生の私の体中に響き渡りました。
Van Halenから興味を持って,当時,貸しレコード屋さんで借りたThe Kinksの音楽は,残念ながら,若く狭い世界しか知らない私には,渋過ぎてその良さが分からず,続けて聴くことはありませんでした。
その後でThe Kinksの名前を再度聞いたのは,大ファンであるPretendersのボーカル,クリッシー・ハインドが,The Kinksのレイ・デイビスと結婚し1児をもうけた時です。もう,その頃はクリッシー・ハインドに夢中でしたから,レイ・デイビスをどれだけうらやんだか。やはり,中学~高校生の頃です。Pretendersの1stアルバムでも,The Kinksの曲がカバーされています。
次は,The Kinks本家本元の“Come Dancing”が流行った時です。ちょっと(大夫?)ひねくれ者のおじさんと言った風情でした。これは,こざっぱりとした今風の曲ですね。
大神田先生のブログを読んで,“Waterloo Sunset”の音源を探してみました。ネットで試聴しただけですが,なるほど,とてもきれいな曲ですね。目をつぶると様々な夕暮れの風景が心に浮かんでくるようです。そして,何やら,青春や人生や街や文化の夕暮れも。歳をとった今ならこの音楽を充分楽しめるのに,若い頃は了見の狭さで損をした物です。 - 投稿者:内藤統也: at 2007/06/27 22:47





